【7月26日 AFP】幹細胞を使用することなく、成長因子の注入でマウスの心臓組織の再生を促進し、心機能を向上させることに成功したとの研究結果が、24日発行の米科学誌セル(Cell)に発表された。心疾患治療における突破口となる可能性がある。

 心臓の弱い患者や遺伝的に心臓に疾患を持った子どもが心臓発作を起こした場合、通常であれば、その後心臓組織は再生しないとされている。

 研究者らは、NRG1と呼ばれるタンパク質を1日1回、12週間にわたって、心臓発作後の生体マウスの腹膜腔に注入した。その結果、「心臓の再生は促進され、ポンプ機能(心エコー図で確認した心駆出率)が無治療対照群と比較して向上」した。

 米ハーバード大医学部(Harvard Medical School)のバーナード・クーン(Bernhard Kuhn)氏は、「知る限り、体系的に適用することのできる初の再生治療になる」と語った。安全性を確かめるためもっと実験が必要だが、将来的にはNRG1を数週間にわたって毎日注入するという治療法が出来るかもしれないという。

「原則としては、実際の治療で採用されることを妨げる要因は全く無い。(将来の治療法の)有力な候補だ」(バーナード・クーン氏)

 また、クーン氏は、「多くの研究が幹細胞を利用したものに集中しているが、われわれの研究の結果によると幹細胞は不要になる。心筋細胞を刺激して増殖させることが代替案になる可能性が出てきた」と語った。(c)AFP