【12月26日 AFP】多忙な人びとがひしめく香港(Hong Kong)のビジネス街では、会社員たちが現下の経済危機を生き残ろうと、ますます激務に励んでいる。

 過労気味の会社員や買い物客のため、香港の繁華街、銅羅湾(コーズウェイベイ、Causeway Bay)のショッピングモール「ディレイ・ノー・モール(Delay No Mall)」内に、手軽に昼寝ができるハイテク仮眠カプセル「スリープポッド」がお目見えした。

 スリープポッドの外見は、未来をイメージした旅客機のファーストクラスといったところだ。市内の喧騒を逃れた完全な暗闇のなかで、身体を横たえて20分間休むことができる。BGMはクジラの鳴き声だ。

「ディレイ・ノー・モール」の設立者で人気雑貨ブランド「G.O.D.」の最高経営責任者(CEO)でもあるベンジャミン・ラウ(Benjamin Lau)さんは、「香港はとにかくクレージーな街。休息する時間さえない」と話す。「ストレスや楽しみにあふれているから、夜も眠れない人も多い。スリープポッドをショッピングモールに設置したのは、香港人がリラックスできる場所を作りたかったから」

 しばし目を閉じての昼寝に、90香港ドル(約1050円)を払うのはそう高い買物ではないと、ラウさんはいう。

 オーストラリアへの留学経験を持つラウさんは、「居眠りに否定的な見方も多いが、これは居眠りではないんだ。心身を再活性化させる場所だと考えてほしい」と語る。

 米ニューヨーク(New York)で2003年に始まった、このスリープポッドを使った仮眠ベッドサービス「メトロナップス(Metronaps)」は、昼寝の効用は科学的に証明されているとうたっている。ハーバード公衆衛生大学院(Harvard School of Public Health)の2007年の研究によれば、定期的な昼寝で心臓疾患リスクが最大で37%も軽減するそうだ。

 一方、労働組合は、スリープポッドは香港の勤勉な労働スタイルを利用してもうけようとしているだけと主張する。労組が行った調査では、香港の労働時間はペルー、韓国、タイ、パキスタンに次いで世界で5番目に長いのだという。

 9月に経営破たんし、野村ホールディングス(Nomura Holdings)に買収された米証券大手リーマン・ブラザーズ(Lehman Brothers)のアジア部門の従業員らも、スリープポッドに特別な関心はないようだ。

 ある社員は職場にスリープポッドがあれば利用したいと思うかも知れないとした上でこう続けた。「でもその時間はないだろうね。僕たちは神に与えられた時間がある限り、働かなきゃならないのさ」と話した。(c)AFP/Sam Wild