【8月20日 AFP】高高度を飛行する米空軍(US Air Force)のパイロットには、パイロットではない人に比べて脳に小さな病変を持つ人がはるかに多いとする研究論文が、19日の米国神経学会(American Academy of Neurology)の学会誌「ニューロロジー(Neurology)」に発表された。

 研究では、U2偵察機で高度約2万1000メートルを飛行する26~50歳のパイロット102人を分析。その結果、パイロットではない人に比べて、大きさでは約4倍、数では約3倍の脳の病変を持つことがわかった。病変は、減圧症の症状の有無にかかわらず見つかったという。

 パイロットではなくても、加齢性の病変を持つ人もいるが、多くの場合、それは前頭部の白質で見つかることが多い。一方、高高度を飛行するパイロットの病変は、脳全体に均等に広がっている。しかし、こうした病変がもたらす影響は、まだ明らかになっていないという。

 論文の著者、米テキサス大学(University of Texas)と米空軍・航空宇宙医学校(School of Aerospace Medicine)に所属するスティーブン・マクガイア(Stephen McGuire)氏は、「空軍パイロットが減圧症を発症するリスクは、2006年に比べて3倍になった。おそらく、より頻繁により長期間、高高度にさらされるようになったためだろう」と指摘する。ただ、これまでに神経認知機能や記憶力の低下を示す恒常的な臨床結果を得ることはできていないという。

 減圧症はしばしば、「潜水病」と呼ばれ、周りの気圧が急激に変化した時に、血中に窒素が放出されて発症する。ダイバー、パイロット、登山家などに多くみられる。(c)AFP