【7月1日 AFP】気分安定薬のリチウム(lithium)は、うつ病患者の自殺リスクを60%以上低下させるという研究論文が先週、英オンライン医学誌「bmj.com」で発表された。

 論文の共著者、英オックスフォード大学(Oxford University)講師(精神医学)のアンドレア・チプリアーニ(Andrea Cipriani)氏によると、リチウムは単極性障害(うつ病)と双極性障害(そううつ病)を治療するために長い間処方されてきたが、その使用は多くの国で減少しているという。

 チプリアーニ氏は「リチウムの使用の減少に関して、理由の一つとして考えられるのは、使用が難しい中毒性の薬として精神科医の間で知られるようになったからだろう」とAFPに電子メールで述べている。医師らは、目まい、発作、心臓障害などの症状を引き起こす過剰摂取を防ぐため、患者の血液中のリチウム濃度を継続的に監視する必要がある。またリチウムは、腎臓と甲状腺の障害や体重増加が発生するリスクの上昇に関連がある。

 だが今回の新しい研究は、リチウムが依然、うつ病の治療薬として重要な位置を占めていることを示唆している。研究では、1968年から2013年の間に実施された、患者7000人近くを対象とした48件の治験結果を再調査した。治験では、うつ病患者に対するリチウムの効果を、偽薬または代替の実薬との比較で評価した。うつ病患者の自殺リスクは、一般人の30倍も高い。

 その結果、リチウムが死亡や自殺のリスクを平均で62%低下させたことが判明した。自殺に限れば、リスクは平均で87%低下したという。また、リチウムの過剰摂取に関連する死亡数の増加はなかったという。

 「この最新の系統的な再調査により、(単極性と双極性の両方の)気分障害がある患者の自殺リスクを低下させるための有効な薬剤としてのリチウムの認識が強まった」と論文の著者らは記している。また声明によると、この効果は「攻撃性と、おそらくは衝動性を抑制する」リチウムの性質によるものだろうという。(c)AFP