【8月18日 AFP】世界保健機関(WHO)がアフリカでマラリア対策として配布している殺虫剤を練り込んだ蚊帳(かや)に、かえって局地的なマラリアの再流行をもたらす恐れがあるとの研究結果が18日、英医学誌ランセット(Lancet)の感染症専門誌「The Lancet Infectious Diseases」に発表された。

 セネガルの首都ダカール(Dakar)にある仏研究機関「開発研究所(IRD)」の現地研究施設では、殺虫剤処理された蚊帳を2008年に導入した同国中部の村ディエルモ(Dielmo)で、蚊帳の効果を調査した。

 IRDのジャンフランソワ・トラプ(Jean-Francois Trape)医師らの研究チームは、蚊帳導入の1年半前から4年間、村の住民500人以上に健康診断を実施してマラリアの罹患者数を調べると同時に、蚊の個体数を調査した。

 すると罹患者数は、蚊帳を導入した08年8月~10年8月までは導入前の8%未満にまで劇的に減少したが、10年9月~12月の間に急増し、導入前の84%になったことが分かった。また、成人と10歳以上の子どもで、罹患者数の増加率が導入前よりも高くなった。

 一方、マラリア原虫を媒介するハマダラ蚊の中で、蚊帳に使われている殺虫剤ピレスロイドへの耐性を持つタイプの占める割合が、07年の8%から10年末までに48%へと急激に増えていることが確認された。

 さらに、蚊の個体数の減少によって住民の免疫力が低下しつつある可能性も浮上した。今回の研究報告では臨床的証拠が示されていないが、特に高齢者でマラリア原虫への免疫力が徐々に衰えていき、そのため蚊の数が再び増加した時に感染抵抗性がなくなった疑いがあるという。

 だが、解説記事を寄せた米テュレーン大(Tulane University)の専門家らは、調査期間が短すぎる上に1つの村だけを対象にした研究である点を指摘し、この研究結果だけをもって「殺虫剤処理された蚊帳には欠陥がある」「結果はアフリカ全体に当てはまる」などと早々に結論付けることは望ましくないと注意を促している。(c)AFP