【12月14日 AFP】妊婦から採取した血液で胎児の遺伝子構造を明らかにする方法を発見したとする論文が、8日の米科学誌「Science Translational Medicine」に発表された。

 これまでの出生前診断では、胎児に潜在する染色体異常などを発見する最も確実な方法は、子宮に穿刺針を挿入して羊水中に浮かぶ胎児由来の細胞を採取することだったが、これには胎児への危険が伴った。

 しかし、論文を発表した香港の研究チームによると、母親の血液中の浮遊物から胎児のゲノムの全容が明らかになるという。

 胎児のDNAは、妊婦の血漿(けっしょう)の約10%を占めている。だが、血漿中のDNA分子は断片でしか存在せず、つなぎ合わせることは技術的に困難だった。

 今回の論文の主著者である香港のデニス・ロー(Dennis Lo)氏らのチームは1997年、妊婦の血液内に存在するこの「浮遊DNA」の検査法を発見した。これは現在、胎児の性別や遺伝性疾患、染色体異常の有無の特定などに広く活用されているが、1回につき1つの疾患または1つの遺伝特性しか明らかにできないという制約もあった。

 今回の研究では、「浮遊DNA」から胎児の遺伝子シグネチャーを分離し、その特性を両親の遺伝子地図と比較した。このようにして、ゲノム規模での胎児の遺伝子地図を構築し、変異や異常を特定することができた。(c)AFP