【3月29日 AFP】スペイン・マドリード(Madrid)で前週開かれた臓器提供と移植に関する国際会議で、豊かな国の患者が貧しい国のドナーの臓器を高額で買い取る「移植ツーリズム」の対策が、世界保健機関(World Health OrganizationWHO)と欧州連合(EU)の主導で進んでいる現状が報告された。

 スペインの国立臓器移植機関のラファエル・マテサンス(Rafael Matesanz)代表によると、WHOと国際移植学会(International Transplantation Society)は2005年、関連法規が存在しない国々での法規の制定を目指し、断固たる移植ツーリズム対策活動を開始した。

 移植ツーリズム問題でWTOのコーディネーターを務めるリュック・ノエル(Luc Noel)博士は、移植ツーリズム対策の「共同戦線」が形成されつつあること、移植ツーリズムの最も盛んな国々のうち中国、フィリピン、パキスタン、エジプト、コロンビアの5か国で、臓器の違法取引を規制する法律が制定されたことを明らかにした。

 これらの国では、貧しい人びとが肝臓や腎臓を裕福な国の移植希望者に売却するケースがよく見られる。スペイン紙パイス(El Pais)は先ごろ、スペイン人患者が08年に中国・天津(Tianjin)市の病院で、13万5000ユーロ(約1680万円)を支払って肝移植を受けたと報じている。

 ノエル博士は、中国の移植ツーリズムは依然として存在するが、07年に施行された法律に基づく違法臓器取引組織の摘発も行われていると指摘した。(c)AFP/Olivier Thibault