【10月9日 AFP】がん細胞が病気の進行とともに遺伝的変異を起こすことを、世界で初めて確認したと、カナダのブリティッシュコロンビアがん機関(British Columbia Cancer Agency)の研究チームが8日の英科学誌「ネイチャー(Nature)」に発表した。新たな治療法の可能性を示す発見だという。

 研究チームは、ある乳がん患者を対象に、病気の3段階において、DNAの数十億個の文字列をすべて解析した。解析に要した期間はわずか数週間。DNAの全解析は世界初だ。

 細胞は通常、死ぬまで分裂を繰り返すが、このときDNAの遺伝子コードは新しい細胞にそれぞれコピーされる。DNAの文字のスペリングミス、つまり突然変異が起こって新しい細胞を制御できなくなった時に、がんが発生しうるという。

 研究チームは、女性の健康な細胞、がんと診断されたときの局所腫瘍(しゅよう)、その9年後に転移したがん細胞について、それぞれ突然変異がないかを調べた。

 DNAの突然変異は、初期の腫瘍には5個あり、転移したがん細胞では32個に増えていた。初期の5つの変異がのちにがんの発症の一因となることは、以前には知られていなかったことだという。
 
 研究チームは、初期の腫瘍と転移したがん細胞の両方を分析することは、乳がんの要因の理解を深め、患者個別の治療薬の開発にもつながると期待を寄せている。(c)AFP/Deborah Jones