【8月6日 AFP】「国が豊かになるほど出生率は下がる」というかつての鉄則は、ある段階まで発展が進むと覆される――。このような研究結果が、5日の英科学誌「ネイチャー(Nature)」に発表された。

 米ペンシルベニア大学(Pennsylvania University)のMikko Myrskyla氏のチームは、人間開発指数(Human Development IndexHDI、)と出生率の関係を分析した。HDIは平均余命、1人当たり国内総生産(GDP)、識字率などを基に各国の生活の質と発展度合いを示すもので、最低値は0、最高値は1。

 その結果、HDIが0.86付近を超えると出生率は底を打ち、0.95付近で再び上昇に転じる傾向があることが分かった。
 
 HDI値が高かった上位12か国の2005年の出生率は平均で1.8だったが、うち数か国で以降の出生率は上昇しており、例えばフランスは08年に40年以上ぶりに出生率が2.0に達した。オーストラリア、スウェーデン、米国、英国などでもちょっとしたベビーブームが起きている。

 この傾向が続き、各国が社会的、経済的な発展を続ければ、現在急激に進行しつつある高齢化社会にとって非常に前向きな予測をもたらすと研究者らは期待している。米国勢調査局(US Census Bureau)の前月の発表によると、65歳以上の人口が現在の5億人から2040年には倍以上の13億人になるとされている。

■「女性に優しい社会」がカギ

 研究によると、富裕国のベビーブームの背景には、女性が子どもを産むという選択を取りやすいよう社会が変わってきていることが大きく影響しているという。

 その上で、HDI値が高いのに出生率は低いという結果が出た「例外」の日本や韓国については、女性の社会的地位が比較的過小評価されているからではないかと分析している。

 米スタンフォード大学(Stanford University)のShripad Tuljapurkar教授は同誌の解説欄で、女性の社会進出が進み収入が増加することが、女性および夫婦が育児における経済的負担を軽くしていると指摘している。

 ただ、同様にHDI値の高いカナダやドイツの出生率の低さについては、今回の研究では説明されていない。(c)AFP/Marlowe Hood