【2月26日 AFP】幻覚剤LSDの脳への作用を研究してきたニューヨークのマウントシナイ医科大学(Mount Sinai School of Medicine)の研究チームは、統合失調症の治療改善をもたらす可能性のある新発見を24日の英科学誌「ネイチャー(Nature)」に発表した。

 Stuart Sealfon氏率いるチームは、マウスを使った実験で、幻覚剤を服用した場合に影響を受ける神経経路および主な症状が、統合失調症患者のそれと極めて似ていることに注目した。統合失調症は、幻聴、他人が自分の心を読んでいるという幻覚、異常な興奮などの症状を特徴とする。

 LSDは、もともと神経・呼吸器系疾患の治療薬として1930年代後半に開発された。LSD服用した場合、統合失調症患者と同様にセロトニン受容体がアンバランスな状態となり、これが原因で妄想や幻覚がもたらされる、

 実験の結果、研究チームはLSDが興奮性神経伝達物質であるグルタミンを抑制する受容体にも作用して特異な変化をもたらしていることを発見した。

 LSDを服用したマウスにグルタミンだけに作用する薬を服用させたところ、LSDの幻覚作用が中和されたという。

 Sealfon氏は、いわゆる「非定型抗精神病薬」の服用者の死体解剖の結果、セロトニンレベルは通常でもグルタミンレベルは低いことが示されていると指摘した上で、統合失調症の治療にはセロトニン受容体とグルタミン受容体の両方に作用する薬が必要だと主張している。

 世界保健機関(World Health OrganisationWHO)によると、統合失調症患者は200人に1人の割合で存在し、男性では10代後半から20代はじめにかけて、女性では20代後半から30代はじめにかけて発症することが多いという。(c)AFP