【9月12日 AFP】生きたマウス体内の体細胞を再プログラム化し、万能性を持つ細胞とすることに成功したと、スペインの研究者らが11日の英科学誌ネイチャー(Nature)の電子版で発表した。幹細胞を用いた組織再生治療という目標にまた一歩近づいた。

 研究の初段階にあるこの技術は、安全面での懸念も多く、実際の治療で使われるのはまだ当分先のことだ。しかし研究者らは、今回の実験成功により、体内の傷ついた、もしくは失った組織周辺の体細胞を再プログラム化することで、患部を治療できるようになる新たな方法につながるかもしれないとして期待を寄せている。

 スペイン国立がん研究センター(Spanish National Cancer Research Centre)のマヌエル・セラーノ(Manuel Serrano)氏とマリア・アバド(Maria Abad)氏が主導する研究チームは、人工多能性幹細胞(iPS細胞)を作り出す4遺伝子を持った遺伝子組み替えマウスを実験で使用した。この4遺伝子については「山中4因子」としても知られている。

 研究チームの報告によると、実験ではマウスに薬物を与えることで、4遺伝子が反応を示し、腎臓、胃、腸、膵臓で体細胞の再プログラム化が確認された。これら再プログラム化された細胞は、極めて高い万能性を持っており、iPS細胞よりも胚性幹細胞(ES細胞)に近い性質を持っていたという。

 セラーノ氏は、研究室の培養皿だけでなく、体内の組織内でも万能細胞を作ることができると実験で確認できたとし、「損傷部周辺における一過性の再生誘導も考慮することができるようになった」と述べている。(c)AFP