【9月11日 AFP】北米大陸に生息し、越冬の大移動で知られるチョウ、オオカバマダラ(Monarch butterfly、学名 Danaus plexippus)の生息数が、メキシコの森林の違法伐採や、移動経路のカナダ・米国で使われる除草剤が原因で減少しているという調査結果が9日、米学術誌「コンサベーション・バイオロジー(Conservation Biology)」に発表された。

 論文を発表した世界自然保護基金(World Wildlife Fund for NatureWWF)メキシコ支部長のオマル・ビダル(Omar Vidal)氏によると、黒とオレンジ色のチョウ、オオカバマダラは毎年、11月から2月の間にメキシコ中部で越冬するためにカナダから移動するが、その生息数が「明らかな減少傾向」を示しているという。

 2001年から2013年の間に、メキシコのメキシコ(Mexico)州とミチョアカン(Michoacan)州にあるオオカバマダラの越冬地で、合計2179ヘクタールの森林が失われたと、ビダル氏は9日の記者会見で語った。

 2012~2013年のシーズンでは、5万6259ヘクタールの広さの保護区内で、オオカバマダラの越冬コロニーの面積は1.19ヘクタールと、越冬コロニーとしてはこの20年間で最小の面積だったとビダル氏は言う。

 過去10年間で、組織犯罪集団が関与する大規模な伐採による森林の消失面積は1503ヘクタールに及んでいる。一方、保護区の近くで暮らす地域社会の人々による小規模の伐採で、家の建築のために554ヘクタールの森林が伐採された。さらに、122ヘクタールの森林が干ばつと洪水が原因で失われた。

 2005~2007年にピークを迎えた大規模な森林伐採は、その後政府による森林保護政策や、民間の寄付で地域社会での雇用創出や地域の監視活動が進んだことで、2012年には森林の消失要因になっていないと論文は指摘している。

 オオカバマダラの4500キロに及ぶ飛行の出発点である米国・カナダでは、除草剤の使用により、チョウの幼虫の餌になるトウワタの数が激減している。ビダル氏は「カナダ政府も米国政府も、オオカバマダラの生息地を保護するために必要なことをしていない」と述べている。(c)AFP