【9月6日 AFP】地球上で最大で、太陽系で最大の火山にも匹敵する超巨大火山を発見したとの論文が5日、英科学誌ネイチャージオサイエンス(Nature Geoscience)で発表された。

 米テキサスA&M大学(Texas A&M University)のウィリアム・セーガー(William Sager)氏率いる研究チームが発表した論文によると、タム山塊(Tamu Massif)と呼ばれるこの火山は、太平洋の海底にある台地、シャツキー海台(Shatsky Rise)の一部で、日本の東方約1600キロに位置している。

 タム山塊は、約1億4400万年前の噴火で吹き出した溶岩が盾状に固まった単一の巨大な丸いドームから成っている。面積は約31万平方キロで、英国とアイルランドを合わせた面積に相当する。海底から頂上までの高さは約3500メートルに達する。

 研究チームは論文の中で「タム山塊は、世界で知られている中で最大の単一の中央火山だ」と報告している。面積では「英国諸島(British Isles)や、太陽系内で最大の火山とみなされている火星のオリンポス山(Olympus Mons)とほぼ同じ」だが「オリンポス山は標高が2万メートル以上なので巨人のように見えるが、体積は(タム山塊と比べ)約25%大きいだけだ」という。また、オリンポス山の「根」は比較的浅いが、タム山塊は約30キロもの深さの根を地殻内に張っている。

 海洋測量士らはこれまで、タム山塊を複数の火山から成る広大な火山系だと考えていた。この種の火山系は、世界中に十数個ほど存在する。

 研究チームは、海底掘削プロジェクトで採取された岩石試料のデータと、調査船に搭載された深部地震探査装置で得られた海底地図を組み合わせ、タム山塊の全体像の解明を試みた。その結果、タム山塊が超巨大な単一の火山であることが分かり、他の太陽系惑星にある超巨大火山と同類の火山が地球上にも存在することが示唆されたという。「地球にある超巨大火山は、海の下という良い隠れ場所があるために、理解がほとんど進んでいない」と論文は指摘している。

 AFPの電子メール取材に応じたセーガー氏は、タム山塊が活火山である可能性は低いとみられると述べた。「タム山塊は百万~数百万年という(地質学的にみて)短期間で形成され、それ以来活動を停止していると、われわれは考えている」

 また、世界中に十数個ほど存在する広大な海台の中には、モンスター級の巨大火山が他にも潜んでいるかもしれないとセーガー氏は考えている。「ソロモン諸島(Solomon Islands)の東方、太平洋の赤道近くにある世界最大のオントンジャワ(Ontong Java)海台は、タムよりずっと大きく、フランスくらいの大きさがある」という。(c)AFP/Richard INGHAM