【8月1日 AFP】間欠泉のように氷を噴き出す土星の白い衛星エンケラドス(Enceladus)の特異性は、土星の引力により生まれる潮汐力が影響しているとする研究結果が31日、米コーネル大学(Cornell University)の研究者が率いる研究チームによって発表された。

 1789年に英国の天文学者ウィリアム・ハーシェル(William Herschel)によって発見された直径わずか504キロほどのエンケラドスは、太陽系でも非常に特異な存在だ。

 表面は美しい白い氷の殻に覆われ、南極付近の「タイガーストライプ」と呼ばれる複数のひび割れを除いては無傷だ。タイガーストライプから噴き出す水蒸気は宇宙の冷たい真空に触れ、即時に氷の粒子となる。エンケラドスには塩分を含んだ海があり、生命が誕生するのに適していると結論づける天体物理学者もいる。

 だが、太陽から遠く離れ、大気温度が絶対零度(摂氏マイナス273度)に近いエンケラドスの地下に、なぜ海が存在できるのだろうか。

 理論家らは、答えは潮汐力と呼ばれる現象にあると指摘する。太陽系の惑星の中で2番目に大きい土星からの引力がエンケラドスの内部を絞り、それによって生じる摩擦熱により、水が液体の状態で存在しうるというのだ。

 長年議論されてきたこの説は、土星の周りの卵形の軌道を周回するエンケラドスから噴き出す氷の粒子を比較することで、より広い支持が得られるようになった。

 今回の研究によると、エンケラドスが土星に最も近い場所にあるとき、ひびから噴き出す氷の粒子は最も少なかった。これは土星の巨大な引力でひびが閉じ、噴き出す水蒸気が比較的少ないからだという。

 一方、エンケラドスが土星から最も離れた場所にあるとき、噴き出す氷は数倍も明瞭に見えるという。これは、ひびが開き、より多くの水蒸気が噴き出しているからだという。

 今回の研究結果は、土星探査機カッシーニ(Cassini)が撮影した赤外線画像252枚をもとに導き出された。(c)AFP