【7月31日 AFP】一夫一婦婚の進化的理由に関して、異なる立場をとる2つの研究が29日、米専門誌に相次いで発表された。

 1組の男女(雌雄)が長期間連れ添うことの利点についてはこれまで、特に人間のように成長期間が長く、成体となるまでに多大なエネルギーを必要とする動物では、オスが子育てを助けるためにメスの近くにとどまるとする説が有力だった。

 しかし今回発表された研究ではどちらも、オスが子育てに関わるようになったのは、一雄一雌(一夫一婦)が確立された後としている。ただ、ペアとして一緒に過ごすようになったきっかけについては、それぞれ別の考え方を主張した。

■他のオスから子どもを守るため

 1つ目の研究は、弱い子どもが他のオスに殺されないよう守りやすくするために一夫一婦婚になったとするもので、英ロンドン大学ユニバーシティー・カレッジ(University College LondonUCL)など英・ニュージーランドの共同チームが、霊長類230種に関する収集データに基づき、米科学アカデミー紀要(Proceedings of the National Academy of SciencesPNAS)に発表した。

 同チームによると、メスは成長速度の遅い子どもを育てている間、新たに子どもを作ることを先延ばしにする傾向がある。そこで他のオスは、既にいる子どもを殺すことで、メスに新たな子どもを作る気にさせようとしたというのだ。

 チームは霊長類同士の進化的関係を反映させた系統樹を作成し、その統計分析を通じて、同時期に進化していったさまざまな行動の時系列の究明、さらには先に登場した行動を特定することに成功した。この時系列によると、ライバルのオスによる子ども殺しがあって、父親のオスが子どもを守るために近くにとどまるようになり、その後に交尾の相手が複数から単独になったという。

■メスと出会う確率が低かったから

 一方、英ケンブリッジ大学(University of Cambridge)が米科学誌サイエンス(Science)に発表した研究は別の手法を用い、一夫一婦婚は競争の結果登場したと結論している。

 同大の動物学者ティム・クラットンブロック(Tim Clutton-Brock)氏は「メスの居場所が広範囲に散らばっているところでは、オスにとって最善の戦略は1匹のメスの元にとどまってそのメスを守りながら全ての子どもの父親になることだ」という。

 この研究では、約2500種類のほ乳類を単独行動動物、一雄一雌制(一夫一婦制)動物、集団生活動物の3つに分類したところ、一雄一雌制は、肉や果実のような食物源が広い範囲に及び、十分な食物を見つけるために長距離を移動しなければならない種類の動物でみられる傾向があった。こうした動物には、数種類のげっ歯類、多くの霊長類、さらにジャッカルやオオカミ、ミーアキャットなど一部の肉食動物が含まれている。また、この種の動物ではメスの生息密度が低いことや、同種同士の行動圏が重なり合うことが少ない傾向もみられた。

 ただし、こちらの研究対象にヒトは含まれておらず、この結果がそのまま現生人類「ホモ・サピエンス」に当てはまるかどうかについて、研究チームは懐疑的だ。

■一夫一婦婚は原因ではなく結果

 同大の共同研究者ディーター・ルーカス(Dieter Lukas)氏によると、「オスによる子育ての手助けは、一夫一婦婚が先にあってから進化したもので、一夫一婦婚の進化の原因というよりもむしろ結果に思える。一夫一婦婚の発達は、メスに利益をもたらしたといえるだろう」

(c)AFP/Naomi Seck