【6月28日 AFP】約70万年前に生息していたウマのゲノム(全遺伝情報)を解読したとする研究論文が、26日の英科学誌ネイチャー(Nature)に掲載された。まだ歴史の浅い古代ゲノム学の分野において大きな発見となった。

 デンマーク自然史博物館(Natural History Museum of Denmark)の科学者らによる論文によると、この新たな発見では、現代の全てのウマ、ロバ、シマウマが、約400万年前に生息していたウマにその祖先を持つことが示されたという。これは、これまで考えられてきたものよりさらに200万年ほどさかのぼる。

 またこの研究により、これまでDNAを抽出するには不適切だと考えられていた多くの化石が、実際には「宝の山」である可能性も出てきた。

■最古のウマのゲノム解読を実現

 研究チームは、約10年前に、カナダ・ユーコン(Yukon)準州にあるシスル・クリーク(Thistle Creek)から見つかった、化石化したウマの骨からDNAのサンプルを抽出した。骨が見つかった永久凍土層を放射年代測定法で調べたところ、周辺の有機物は約73万5000年前に堆積したものと判明。このことから、これまでで最も古い約56万~78万年前に生息していたとみられる動物のゲノム(全遺伝子情報)の解読に成功したと判断した。

 研究チームは、解読した遺伝子情報を、約4万3000年前の後期更新世(Late Pleistocene)に生息していた種、現代に生息する5種のウマ、イエウマ(家畜馬)から分岐した野生種の「プルツワルスキー(Przewalski、 モウコノウマ)」、そしてロバのものと比較・分析した。

 分析結果について研究チームは、「450万年前に生息していた種が、現在のウマやシマウマ、ロバのすべてに進化したことを示している」と述べた。

 研究チームはまた、遺伝子学的見地から、(現存する最後の野生種である)プルツワルスキー種保存のためにイエウマと掛け合わせることは有効だと指摘した。野生種への遺伝的な侵入はほぼ皆無とみられているためだ。

 このたびの研究結果を受け、これまでは解読には適していないと考えられてきた化石を通じて、今後、先史時代の動物や、われわれの祖先についてのゲノム解読がさらに進むかもしれない。(c)AFP/Laurent BANGUET