【6月27日 AFP】やりや石を投げて獲物を殺すために必要な肩の構造を発達させたことが、人類の進化の過程における大きな成功の一つだとする研究論文が26日、英科学誌ネイチャー(Nature)に発表された。

 研究チームによると、比較的その重要性が評価されていない部位である肩は、およそ200万年前に発達した投てきのための身体構造において重要な役割を担っており、これにより、かつて弱々しかった人類の祖先は、投てき用武器を使って獲物を捕らえることが可能になったという。

 米ジョージ・ワシントン大学(George Washington University)の研究チームは、3次元高速度カメラを用い、学生野球選手がボールを投げる様子を撮影した。

 その結果、物を投げる時には肩がぱちんこのような役割を果たし、エネルギーをため込んでから解放する機能を持っていることが分かった。チームは、エネルギーのため込みを生み出している生体力学を分析した。

■肩の進化、天敵の多い環境を生き残るカギに

 現生人類「ホモ・サピエンス(Homo sapiens)」が持つ肩や腕、上半身の主な特徴を最初に発達させたのは、200万年前に生息していた祖先「ホモ・エレクトス(Homo erectus)」だった。

 肩の進化は、動きがのろく、爪や牙といった武器を持たないエレクトスがなぜ天敵の多い環境を生き残れたのかという謎を解くヒントになる。こうした身体的な短所を持ちながらも、人類の祖先たちは遅くとも260万年前から肉を食べ、190万年前には大型動物を狩っていたとみられている。

 チームは「現在の狩猟採集民族は狩りで投てき武器に頼ることはほとんどないが、それ以前の人類はおそらく、動物の死骸を得てそれを守るために頻繁に物を投げていたのではないか」と推測している。

 石や鋭利な棒を投げる手法は、至近距離で獲物を捕らえるよりも効果的かつ安全だ。獲物から得られたタンパク質は、エネルギー消費量の多い脳の発達に寄与したと考えられる。

 同大学ヒト科純古生物学高等研究センター(Center for the Advanced Study of Hominid Palaeobiology)のニール・ローチ(Neil Roach)氏は「カロリーが豊富な肉や脂肪を食べることにより、脳や体が大きくなり、新たな地域に進出することができたのだろう。これらが全て、現在の私たちを形作ってきた」と述べている。(c)AFP/Richard INGHAM