【5月21日 AFP】アフリカに生息する毒ヘビの表皮の模様の黒い部分にある光吸収率の高い「ナノ構造」を特定したという論文が16日、英科学誌ネイチャー(Nature)系オンライン科学誌「サイエンティフィック・リポーツ(Scientific Reports)」に発表された。究極の光吸収物質を作成するための新たな着想が得られる可能性もあるという。

 ウエストアフリカンガブーンバイパー(West African Gaboon Viper)というこのヘビは、アフリカ最大の毒ヘビの1種で擬態の名手でもあり、表皮に幾何学模様がある。この模様の黒い斑点はビロードのような深みのある黒色で、光をほとんど反射しない。

 この黒色部分は、光の反射率が非常に高い白色と茶色のうろこと織り交ぜになることで高いコントラストを生じ、色とりどりの熱帯雨林の地表でこのヘビを見つけるのを困難にしている。

 黒い斑点の極度な暗黒色の秘密を明らかにしようと試みたドイツ・ボン大学(University of Bonn)の科学者チームは、うろこの表面が密集した木の葉状の微細な構造でできており、さらにこの微細構造の表面がナノメートル大の突起で覆われていることを発見した。1ナノメートルは、10億分の1メートルに相当する。

 科学者チームは論文の中で、この微細な構造の突起がわずかに異なる角度で出ているため、これによって入射光が散乱されて閉じ込められることを理論化した。同チームは「この構造に基づいてビロード状の黒が生じる効果は、他の物質に移し替えることができる可能性もある」と記している。

 光の吸収率が高く、反射率が低い人工物質の研究は、特殊な光学システムや太陽熱の捕捉などで利用できる可能性があるため、科学技術分野で重視されている。

 論文の共著者の1人で、同大学動物学研究所のマレーネ・シュピンナー(Marlene Spinner)氏は、人工の「極黒」表面の中にはこのヘビの斑点より高い暗度を示すものがすでに存在するが、ヘビのナノテクノロジーを導入することで光の吸収率をさらに高められる可能性があるとAFPに語った。(c)AFP