【1月21日 AFP】8世紀に地球を直撃した宇宙からのガンマ線の波は2つのブラックホールが衝突した結果生じた可能性があるとの研究が、21日の英国王立天文学会(Royal Astronomical Society)の専門誌「Monthly Notices」に掲載された。

 8世紀に起きたガンマ線の地球直撃については、日本の研究者、三宅芙沙(Fusa Miyake)氏が2012年に発表していた。三宅氏は、屋久杉の年輪を調べるなかで、774年または775年に形成の年輪から炭素14の濃度が急激に増加していることを発見し、この時代に宇宙線の強度が急激に増加していたことを突き止めた。

 だが宇宙線の放出が起きた原因については不明のままだ。その当時に超新星爆発が起きたことを示す証拠も発見されていない。また「アングロサクソン年代記(Anglo-Saxon Chronicle)」には日没後に「赤い十字架」が出現したという記述もあるが、これが起きたのは776年でタイミングとしては遅すぎる。太陽フレアの可能性も除外されている。

 独イエナ大学(University of Jena)の宇宙物理学研究所の研究者、バレリー・ハムバルヤン(Valeri Hambaryan)氏とラルフ・ノイホイザー(Ralph Neuhaeuser)氏は、論文でこの謎に新たな説明を試みている。

 2人は、2つのブラックホールの衝突および合体により、ガンマ線の強烈な放射が瞬間的に発生したという仮説を立てた。また、中性子星もしくは白色矮星(恒星が一生を終える際の形態の一つ)同士が衝突した可能性もあるという。

 論文によれば、この出来事は少なくとも3000光年以上離れた場所で起きたとみられる。それより近ければ地球は焼失していたとした。

 仮に2人の仮説が正しければ、当時、強烈に「まぶしい事象」が起きたという記録がないことや、地球の生物が絶滅したといったような出来事がなかったことについても説明がつく。

 論文は、目に見えない証拠が宇宙に現在も残っている可能性が高いとし、天文学者らにその探索を提案している。また、同様の出来事が将来発生した場合のリスクを推計することも肝要だと提言した。(c)AFP