【12月24日 AFP】気候変動による海面上昇幅の約1割は西南極氷床(West Antarctic Ice Sheet)の融解によると推測されているが、西南極の気温は以前に考えられていた2倍のスピードで上昇しているとみられることが分かった。

 米オハイオ州立大学(Ohio State University)バード極地研究センター(Byrd Polar Research Center)のデービッド・ブロムウィッチ(David Bromwich)氏らがまとめ、23日に英科学誌ネイチャージオサイエンス(Nature Geoscience)電子版に掲載された論文によると、西南極における1958~2010年の気温の記録を再分析した結果、この期間の気温上昇幅は同期間の世界平均の約3倍にあたる約2.4度だったことが分かった。これは、先行研究で推測されていた気温上昇幅のほぼ2倍で、西南極は地球上で最も温暖化が急速に進んでいる場所の1つだったことになる。

 1957年に西南極の中央部に設立されたバード極地研究センターは職員が常駐しているわけではなく、太陽電池パネルによる充電が不可能になる長い極夜の時期を中心に停電が頻発することから、保管されているデータは不完全なものだった。ブロムウィッチ氏および米国の複数の研究機関の研究者からなるチームは複数の情報源から収集した気象データでバード極地研究センターの記録で欠落している部分を補うとともに、校正誤差を修正した。

 国連(UN)の「気候変動に関する政府間パネル(Intergovernmental Panel on Climate ChangeIPCC)は2007年、海面は2100年までに18~59センチメートル上昇すると予測した。しかし、米国学術研究会議(US National Research Council)は今年6月、極氷冠の融解が海面上昇を加速させることから、実際にはその2~3倍の上昇になる可能性があると指摘していた。(c)AFP