【12月13日 AFP】原始海洋生物の祖先だと考えられてきた5億年以上前の化石群が、実は陸生生物の化石群だった可能性を指摘する研究論文が、12日の米科学誌ネイチャー(Nature)に発表された。この説が正しければ、原始生物は陸に上がる前に数十億年にわたり海の中で繁栄していたとする従来の定説が覆えされるかもしれない。

 6億3500万年前~5億4200万年前までさかのぼる「エディアカラ(Ediacara)生物群」は、1946年にオーストラリア南部で発掘された。長い間、クラゲや蠕虫(ぜんちゅう)、「ウミエラ」と呼ばれる花のような海底動物などの化石群だと考えられてきた。

 だが米オレゴン大学(University of Oregon)の地質学チームが非常に緻密な化学顕微鏡分析技術を用いて行った研究では、これらの化石が陸生生物のものだった可能性が高いとの結論に至った。さらにチームは、この生物は動物ではなく、菌類と藻類が一緒になった共生体「地衣類」か、微生物の集落(コロニー)ではないかとみている。

 論文執筆者のグレゴリー・レタラック(Gregory Retallack)氏は「エディアカラ生物群が動物の祖先から外されることになり、進化系統樹に影響を及ぼす発見だ」と述べている。同氏によるとこれらの化石は進化の過程上、海洋生物の種が爆発的に増えた「カンブリア爆発(Cambrian Explosion)」より少なくとも2000万年先駆けて、陸上には独立して多様な系統に進化する生物群が存在していたことを示しているという。

 ただし、レタラック氏は他の地域でも化石が見つかっているエディアカラ生物群の全てが陸生だったわけではないとも付け加えている。

 アリゾナ州立大学(Arizona State University)地球・宇宙探査大学院(School of Earth and Space Exploration)のポール・クナウス(Paul Knauth)氏はこの論文について、レタラック氏の仮説が正しいとすれば、海生から陸生への移行を定説よりも早く達成した生物が存在したことを示す発見だと述べ、さらに「移行がこの逆の方向(陸生から海生)に起きた可能性」さえも示唆するとコメントした。

 一方、米国の研究者の中には、今回提示された証拠が「説得力に欠ける」と指摘する声も上がっている。(c)AFP