【10月15日 AFP】月の土壌サンプルから、間接的ながら太陽に由来する可能性のある水分子を発見したとする論文が、14日の英科学誌ネイチャージオサイエンス(Nature Geoscience)に掲載された。

 このサンプルは米航空宇宙局(NASA)のアポロ(Apollo)計画によって地球に持ち帰られたもの。水分子と、水の前駆体であるヒドロキシ基が含まれていたという。ヒドロキシ基は水素原子1つと酸素原子1つが結合したもので、水(H2O)は水素原子2つと酸素原子1つが結合したものだ。

 米テネシー大学(University of Tennessee)のヤン・リウ(Yang Liu)氏率いる研究チームは、この水分子について、太陽風(太陽から噴き出したプラズマ粒子)に含まれる水素イオンと、軟らかい月面の表土(レゴリス)とが反応して発生したとの仮説を立てている。

■太陽と同じく重水素が少ない月の土壌

 太陽は45億年前にガス雲から形成された。このとき、ガス雲の中の全ての重水素が水素と反応してヘリウムが生じたため、太陽系の他の惑星と異なり、太陽には重水素がほとんど存在しないという特徴がある。

 研究チームはアポロ11号、16号、17号が月から持ち帰ったレゴリスを赤外分光分析にかけ、土壌の化学的特徴を調べた。すると液体の水はなかったが、土壌に溶けこんだ水分子が見つかった。さらに、これらの土壌サンプルに含まれる重水素は明らかに少なかった。

■太陽風の水素が土壌内の酸素と結合か

 これまで内太陽系(太陽から火星・木星間にある小惑星帯まで)における水の発生源は、惑星に衝突した彗星や水分を多く含む隕石に由来すると考えられてきた。

 だが、今回の研究が正しければ、太陽風に含まれる水素が第2の水の発生源である可能性が出てくる。ある試算に基づけば、太陽風が月の表面に衝突する速度は時速160万キロ。月の表面から深さ100ナノメートルの土壌まで浸透しているとされる。

 太陽風の中の水素がどのようにしてレゴリス内の酸素と結びついて水分子を形成するかは不明だが、この現象は内太陽系なら月以外の別の星でも起こり得ると、研究チームは指摘している。ちなみに、地球は周囲に磁気圏があるためこの現象は起こらない。(c)AFP