【10月1日 AFP】寿命の長さには男性ホルモンの1種、テストステロンが関係しているらしい──14世紀末から約500年にわたる李氏朝鮮(Joseon Dynasty)時代の貴族たちの系譜を研究した結果、去勢された宦官のほうがそうでない男性よりも長生きしたという証拠を得たと、韓国・仁荷大(Inha University)チームが24日の米科学誌カレント・バイオロジー(Current Biology)に発表した。

 李氏朝鮮時代のこのデータによると、大半の男性は王や王族を含めて、40代後半から50代前半で亡くなっていた。しかし去勢された宦官は平均して70歳の高齢まで生きていた。論文の主著者、ミン・キュンジン(Kyung-Jin Min)氏はAFPの取材に対し、理由はおそらく男性ホルモンのテストステロンにあると述べ、「テストステロンは男性の冠動脈疾患の発症率を高め、免疫機能を低下させることが知られている」と語った。

 一方で過去の様々な動物実験では、「男性ホルモンの分泌源を摘出する」去勢を受けた多くのオスで、寿命が延びることが証明されていると論文は指摘している。

 またミン氏は「老化に関する有力説の一つに、老化は生殖と引き換えに起こるという説がある」と指摘し、去勢して生殖しなくなることが長寿化の一因となっている可能性もあると述べた。身体の持つエネルギーは限られており、生殖機能の維持か、その他の機能の維持かのどちらかに使われるという説だ。

 宦官は生物学的に父親になることはできないが、結婚して養子を育てるなど、去勢していない男性とほぼ同様の家庭生活を送っていた。研究では寿命に影響した可能性のある社会経済学的要因を排除するため、両班(貴族階級に相当)の男性のグループと、その人物と社会経済的地位がほぼ同じ宦官のグループの寿命を比較した。

 では寿命を延ばしたい現代男性は「テストステロン抑制療法」として去勢を受ければよいのだろうか。ミン氏は、それは早まった考えだと言う。一つには宦官は皆、子どもの頃に去勢されており、もっと年齢が高くなってから去勢した場合に寿命に影響があるかどうかは明らかになっていない。また去勢を受けると性的欲求が減るため、そこから長生きすることに意味を見出せなくなるという副次的影響が起こる男性もいると言う。こうした影響も考慮する必要があるとキュン氏は指摘している。(c)AFP