【9月21日 AFP】海深くまで潜って餌を取る海洋哺乳類は、どうして潜水病を患わないのか――これまで謎とされてきたその仕組みについて解明したとする米研究チームの論文が、18日の英専門誌バイオロジー・レターズ(Biology Letters)で発表された。

   「減圧症」とも呼ばれる潜水病は、潜水時の水圧で圧縮された血中窒素が浮上する際に膨張することが原因で起きる。症状としては、体に痛みが生じ、時に死に至ることもある。

 米カリフォルニア(California)州にあるスクリップス海洋研究所(Scripps Institution of Oceanography)のビルギッテ・マクドナルド(Birgitte McDonald)氏が率いたこの研究では、カリフォルニアアシカ(Zalophus californianus)の雌の成体1頭を捕らえ、大動脈内の酸素分圧、潜水時間や潜水深度を計測する機器を取り付けて海に戻した。

 チームは、無線で送られた48回分の潜水データ(各回およそ6分間)を分析した。

 結果、酸素分圧が水深225メートル付近で劇的に低下したことから、ここで血流へ取り込まれる空気(窒素)を遮断するために肺を意図的に「つぶしている」ことが分かった。潜水を行う哺乳類は、空気を取り込むための器官である肺胞から空気を追い出して肺を縮めることが知られている。

 アシカはさらに300メートルの深さまで潜水を続けたのち、浮上を始めた。水深247メートルあたりで酸素分圧は再び上昇し、ここで肺が再膨張したことがみて取れた。

 では、浮上するために必要な空気は体のどこにため込まれていたのだろうか。実験結果によると、潜水時に肺から追い出された空気は気管上部の比較的太い細気管支と気管部分にとどまり、窒素が血中に取り込まれるのを防いでいたとされる。論文ではまた、水面へ向けて浮上する際、この空気を肺に戻して肺胞に酸素を供給しているとした。

 実験終了後、アシカからは機器が取り外され、再度海へと戻されたという。

 自然界にはカリフォルニアアシカよりもさらに深く潜水する動物が存在する。コウテイペンギンは水深500メートル以上、またゾウアザラシに至っては水深1500メートル以上も潜水可能だという。(c)AFP