【7月25日 AFP】交尾中のハエが出す音は、天敵のコウモリをおびき寄せ、無防備な状態でのむごたらしい死へとつながってしまうという研究結果が、24日の米科学誌カレント・バイオロジー(Current Biology)に掲載された。

 ドイツ・マールブルク(Marburg)近郊の牛舎に集まるハエとコウモリを観察した研究グループは、ハエが交尾中に捕食される確率が圧倒的に高いことを発見した。

 論文の共同執筆者、独マックス・プランク鳥類学研究所(Max Planck Institute for Ornithology)のステファン・グライフ(Stefan Greif)氏はAFPに対し、動かずに1匹だけでいるハエと比べて交尾中のハエは獲物になる確率が6倍になったと説明している。「セックスは命取りだ」とグライフ氏は言う。

 研究チームが2001年、05年、06年、09年に行った調査で、合計13夜にわたり牛舎の屋根裏をねぐらにするタイリクノレンコウモリの捕食活動を観察したところ、コウモリが天井を歩くハエを襲った例は1回もなかったのに対し、交尾中のハエに対する攻撃は59回に上った。

 論文によれば、「観察を行った全ての年を通じた平均で、交尾中のハエの26%がコウモリに襲われた」という。

 コウモリは交尾の姿勢のまま死んだ2匹のハエの死骸には興味を示さなかったことから、研究チームは交尾中に発せられる高周波音がコウモリを引き付けているのではないかと考えた。

 この仮説を裏付けるため、天井に設置したスピーカーから事前に録音したハエの交尾の音を流したところ、コウモリたちはスピーカーを襲い始めた。

 コウモリは音波を発して獲物の場所を特定するが、動かないハエや天井を歩くハエが発する音は非常に小さいため、周囲の反響音にまぎれて発見するのが難しいのだと論文は説明している。一方、交尾中のハエからは、オスが羽をばたつかせて出しているとみられるブーンという音やカチッというシグナル音が大きく発せられるという。(c)AFP