【6月1日 AFP】脊髄損傷でまひしたラットを、脊髄電気刺激と補助機器を使ったリハビリ治療を通じて再び歩けるようにする実験に欧州の研究チームが成功し、米科学誌サイエンス(Science)に論文が掲載された。

 研究を率いたスイス連邦工科大学ローザンヌ校(Ecole Polytechnique Federale de LausanneEPFL)のグレゴワール・クルティーヌ(Gregoire Courtine)氏によると、この研究を成功に導いたポイントはラットに自らリハビリを行うよう促したことだという。

 リハビリ治療では、脳が四肢を動かす際に発する信号を模倣した電気化学的刺激を脊髄に送ると同時に、補助機器を使ってラットに真っすぐ立った姿勢を保たせるようにした。ラットはハーネスによって2足歩行の状態に吊り上げられ、よろめかずに歩けるよう体を固定された。このハーネスには歩行そのものを補助する機能はない。

 ラットの前方には報酬としてチョコレートを置いた。ラットはすぐに何歩か歩くことに成功し、5~6週間のうちに餌のチョコがなくても自力で階段を登ったり、行く手の障害物を避けたり、走ったりできるようになった。このリハビリ後、ラットの脳と脊髄を接続する神経は3倍に増えたという。

 クルティーヌ氏によると100匹を超えるラットでこの治療方法を試した。効果の程度には個体差があったものの、全てのラットで自発的な運動が回復したという。

 リハビリ開始当初ラットは悪戦苦闘していたが、「初めて成功したときラットは驚いた様子だった。まるで『うわっ、ぼく歩いた!』と言っているみたいだった」とクルティーヌ氏はAFPの取材に語った。(c)AFP/Kerry Sheridan

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