【5月15日 AFP】ギリシャのクレタ(Crete)島に史上最も小さなマンモスが350万年前まで生息していたとの研究論文が、9日の学術専門誌「英国王立協会紀要(Proceedings of the Royal Society B)」に発表された。「Mammuthus creticus」と命名されたこのマンモスは肩高がわずか120センチで、現代の赤ちゃんゾウ程度の大きさしかないという。

■見た目は「アジアゾウの赤ちゃん」

 論文執筆者で、英ロンドン(London)にある自然史博物館(Natural History Museum)の古生物学部門に勤めるビクトリア・へリッジ(Victoria Herridge)氏によると、この小さなマンモスの体重は310キログラムほど。他のマンモスのような体を覆う長毛はなかったとみられる。AFPの取材に、へリッジ氏は「多分、かなり愛らしかったはず」と付け加えた。

「このマンモスを再現するとしたら、私なら赤ちゃんゾウを少し太らせた感じにする。脚も少し太めにして、成体なら大きくカールした牙をつける。最も近いイメージはアジアゾウの赤ちゃん。ただし、牙が生えている」(へリッジ氏)

 英語で「巨大」の同義語でもあるマンモス。肩までの高さは4メートルにも達する。だが絶滅した類縁種のマンモスと比べて、クレタ島のマンモスは「とても小さかった」とへリッジ氏は語る。それでも、「もし、ばったり出くわしたら、ちょっと怖いと感じるかもしれない。背が1メートルはあるし、牙もあるから」

■「島しょ矮化」で小型化か

 論文によると、この小さなマンモスは、孤立した環境に生息する動物が進化の過程で小型化する「島しょ矮化(わいか、insular dwarfism)」と呼ばれる現象の古い事例だ。温暖な気候に適応して長毛を持たなかったヨーロッパ最初のマンモスとされるMammuthus meridionalisかMammuthus rumanusのいずれかを祖先に持つと推測され、祖先のマンモス種の成体よりも、その幼児期の特徴を多く受け継いだという。

 このマンモスの歯から、小型マンモスは様々な植物を食べていたと推測される。

 へリッジ氏によれば、小型マンモスたちがクレタ島に到着した年代は、最も早くて350万年前ごろとみられる。だが、牙以外の化石は、ほとんど見つかっていないため、その後もマンモスたちがクレタ島に生息していたかどうかは分かっていないという。(c)AFP