【2月20日 AFP】ウシの幹細胞から作った世界初の「人工肉」の製造を今秋開始すると、オランダの科学者マルク・ポスト(Mark Post)氏が19日、カナダ・バンクーバー(Vancouver)で開かれた米国科学振興協会(American Association for the Advancement of ScienceAAAS)年次総会で発表した。

 オランダ・マーストリヒト大学(Maastricht University)生理学部長を務めるポスト氏は、肉を完全に模倣した骨格筋組織を研究室で製造する効率的な方法を開発し、最終的には食肉業界に取って代わることを目指している。

「次の農業革命(The Next Agricultural Revolution)」と題されたシンポジウムで講演したポスト氏は、世界初の「試験管肉バーガー」の材料は「まだ実験段階」にあるものの、今秋までには「2000個ほどの小組織片を作り、ハンバーガーに組み立てることを目指している」と語った。

 このプロジェクトは、匿名の投資家が「環境への懸念、世界のための食料、人生の転機となる技術への関心」から提供した25万ユーロ(約2600万円)の資金で運営されているという。

■急増する世界の食肉需要の解決策となるか

 シンポジウムを主催した米科学者ニコラス・ジェノビーズ(Nicholas Genovese)氏によると、世界の食肉需要は2050年までに60%増加する見通し。

「だが地球上の牧草地は大半が既に使われている」とジェノビーズ氏は述べ、既存の食肉生産者がこの急増する需要を満たすためには、さらに自然を開拓する以外に方法がないと指摘。そうすれば生物の多様性が損なわれ、温暖化が進み、疾病も増加することになると警告した。

 ちなみに、食肉産業界でこれまで「人工肉」技術に関心を示した企業はまだないという。(c)AFP/Deborah Jones