【12月23日 AFP】身長が2メートル以上もあったことから18世紀の英ロンドン(London)で世間の注目を集めたアイルランド人、チャールズ・バーン(Charles Byrne)の骨格標本は、博物館から出して故人の望みどおり海葬にすべき――。英医学誌「ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル(British Medical JournalBMJ)」に寄せた論文のなかで医学専門家らがこのように提唱した。

 身長が約2メートル30センチもあったバーンはロンドンで一躍人気者となったが、1783年に22歳の若さで死亡した。バーンの遺体に特異な関心を示したのが、著名な外科医で解剖学者だったジョン・ハンター(John Hunter)だった。

 バーンは生前、自分の遺体がハンターの標本コレクションに加えられることを恐れ、自分が死んだら海葬にしてほしいと話していたという。だが、ハンターはバーンの友人たちに金を渡し、イギリス海峡(English Channel)で海葬される前に遺体を入手。遺体を骨格だけが残るまでゆで、自身の骨格標本コレクションの目玉にした。

 その後、バーンの骨格はロンドンの王立外科医師会(Royal College of Surgeons)内にあるハンタリアン博物館(Hunterian Museum)に展示されるようになり、現在に至っている。

 ロンドン大学クイーンメアリー校(Queen Mary, University of London)のレン・ドイアル(Len Doyal)名誉教授らが書いた論文は、成長ホルモンが過剰に分泌される先端巨大症や下垂体の研究にバーンの骨格標本が役立ったことを認めたうえで、もうバーンの遺志をかなえ、海で安らかな眠りにつかせるべき時期だと主張している。バーンのDNAはすでに採取されており、今後の研究にはそれで十分で、博物館には骨格のレプリカを展示すればよいとしている。

 しかしハンタリアン博物館のサム・アルバーティ(Sam Alberti)館長は、バーンの骨格は現在でも家族性下垂体腺腫の研究に役立つなどその価値は高く、教育・研究上の観点から骨格の保管を続けることを検討していると述べた。(c)AFP