【12月17日 AFP】農薬を多用する新品種を開発し、穀類の収穫高を大きく増やしてアジアの貧困層の多くを飢餓から救った1970年代の「緑の革命」を牽引した国際稲研究所(International Rice Research InstituteIRRI)が、今度はコメ生産の農薬使用を削減すべきだと訴えている。

「緑の革命」は、アジアなどで主食の穀類の収穫高を大幅に増加させたが、肥料や農薬に大きく頼るものでもあった。この「緑の革命」をもたらした機関のひとつがIRRIだ。

 フィリピンにある同研究所は16日、アジアで稲作に大きな被害をもたらしている害虫、トビイロウンカを駆除する殺虫剤の使用を減らすべきだという見解を発表した。殺虫剤の使用に、水田の生物多様性の減少が重なり、トビイロウンカの天敵の虫やクモが減っているという。IRRIでは「トビイロウンカの大発生と戦うためには、自然の天敵にあたる生物種の多様性を広げ、殺虫剤の使用を減らすべきだ」と述べている。殺虫剤の使用過多によって、駆除対象ではない益虫までもが死んでしまうためだ。

 またIRRIは、世界の中でもコメの生産と消費が最も多いアジアでは、コメの品種をもっと多様化する必要があるとも指摘している。アジアで行われている3期作を同じコメの品種で長年続けると、害虫が適応してしまい、大型化するという。

 タイでは3か月前、IRRIの後押しを受けて、コメに使用する農薬のうちアバメクチンとシペルメトリンの2種類の殺虫剤が禁止された。このふたつの殺虫剤の不適切な使用によって、トビイロウンカが逆に大量発生してしまったのだ。

 ベトナムのアンザン(An Giang)省では3月から、水田の近くでトビイロウンカの天敵が好む花を育て始めた。

 IRRIの環境科学部門の責任者バス・ボウマン(Bas Bouman)氏は「今起こっている大発生に対処するだけではなく長期的、効果的に害虫の予防と管理ができるよう、現行の害虫対策を真剣に再考する必要がある」と指摘している。(c)AFP