【11月14日 AFP】米航空宇宙局(NASA)は10日、火星にかつて生命が存在していた痕跡を探す探査のため、史上最大にして最も高価な無人探査車「キュリオシティー(Curiosity)」を、25日に米フロリダ(Florida)州のケープカナベラル(Cape Canaveral)空軍基地から打ち上げると発表した。

 正式名称は次世代火星探査機「マーズ・サイエンス・ラボラトリー(Mars Science LaboratoryMSL)」という重さ899キロのキュリオシティーは、開発に25億ドル(約1900億円)が費やされた。搭載したビデオカメラや各種の装置で火星の岩石や土を分析する。

 打ち上げ時刻は、11月25日午前10時21分(日本時間26日午前0時21分)の予定。

「これは火星を研究する科学者のドリームマシンだ」と、キュリオシティーの開発に関わったNASAジェット推進研究所(Jet Propulsion Laboratory)のアシュウィン・バサバーダ(Ashwin Vasavada)氏は言う。「これまで打ち上げられた中で一番高性能な科学探査機なんだ。興奮してるなんてもんじゃないよ」

 打ち上げ後のキュリオシティーは、火星の赤道南側のゲール・クレーター(Gale Crater)に着陸する予定になっている。ここは土壌が変化に富んでいて小さな山もあるため、キュリオシティーはさまざまな土を採取して分析できると見込まれている。

■有人火星探査への中間点

 だが、その前にキュリオシティーには、地球から火星まで5億7000万キロの旅が待っている。火星着陸は、打ち上げから8か月半後の2012年8月になる見通しだ。

 火星着陸そのものも、一大スペクタクルになるはずだ。ラビオリのような形をしたカプセルから「ロケットバックパック」に吊されるような形で離脱したキュリオシティーは、パックパックのエンジンを噴射させながらゆっくりと地表に着地する。キュリオシティーの6つの車輪とサスペンションシステムは、着地する寸前に飛び出す仕組みになっているという。

 その後キュリオシティーは「地表走行モード」に移行し、カメラや長いロボットアームを使って火星探査活動を行う。

 NASAはキュリオシティーを、1976年に火星に到達した「バイキング(Viking)」と2030年代に計画されている有人火星探査の中間点と位置づけている。

 キュリオシティーの火星探査は、現存する生命を探すというよりも、かつて火星に生命が存在した痕跡を探ることに力点が置かれている。

 キュリオシティーが火星から送ってくる火星の居住環境や放射線レベルについての情報は、NASAが今後の火星探査計画をたてる上で重要な役割を果たすだろう。

 火星で採取したサンプル分析を担当するパメラ・コンラッド(Pamela Conrad)氏は、「火星では生命が誕生していた可能性があるし、居住可能な環境に必要とされる複雑な化学反応が起きていた可能性も十分にある。こうした全ての情報はいまも火星にある」と、キュリオシティーによる探査への期待を示した。(c)AFP/Kerry Sheridan

【動画】NASAが公開したイメージ映像(YouTube/AFPBB News公式チャンネル)