【11月11日 AFP】9日の打ち上げ後、予定の軌道に乗れず地球低軌道上で立ち往生しているロシアの火星探査機「フォボス・グルント(Phobos-Grunt)」の軌道修正の試みは10日も失敗し、数日中にも地球に落下する恐れが高まっている。

 フォボス・グルントは、地球周回軌道に投入後、数時間以内に火星に向けて進路を変更する予定だったが、ロケットエンジンが噴射しなかった。エンジン噴射に失敗したのが南米上空で、ロシアは南米にレーダーを持っていないことから、ロシア連邦宇宙庁(Roskosmos、ロスコスモス)は海外の情報源を通じて初めてこの事実を知った。

 同庁は10日、フォボス・グルントが無線通信圏内に入ったわずかな時間を狙って通信を試みたが、応答は得られず、関係者らの間には暗たんとした空気が広がりつつある。2回目の通信の試みが失敗した後、ロシア通信(RIA Novosti)は「現段階で最も恐ろしいのは、探査機から全く信号が返ってこないことだ」との関係筋の談話を伝えた。

 別の関係者は、「探査機を復活させて火星に送り込める確率は極めて小さくなった」と露ウェブサイト「gazeta.ru」に語った。フォボス・グルントを生き返らせるため、欧州宇宙機関(European Space AgencyESA)も全面的に協力している。

■数日中にバッテリー切れ、地上落下はいつ?

 最も危惧されているのは、中国初の火星探査機「蛍火1号(Yinghuo-1)」も搭載し、総重量13.5トンに上るフォボス・グルントが、地球に落下する可能性だ。積載されている燃料は極めて毒性が高い。

 ロスコスモス高官が匿名を条件に露インタファクス通信(Interfax)に語ったところによると、「探査機は1日2キロずつ高度を下げている。このペースなら数週間、あるいは1か月はもちこたえられるかもしれない」という。だが、他の関係者は、バッテリーが今週末には切れると見られることから、探査機が制御不能になることは避けられないと指摘する。

 宇宙ゴミと化したフォボス・グルントが大気圏へ再突入する際に、燃料やその他使用されている有害物質が地球上に降り注ぐ危険性について、関係者らは現時点では予測できないとの見方を示している。

 探査機は、当初の予定では、来年火星に到達し、再来年の2013年には着陸船が衛星フォボス(ギリシャ語で「恐怖」の意)の土壌サンプルを採取。14年8月に地球に帰還することになっていた。惑星探査に成功すれば、ソ連崩壊後では初。国家の威信をかけた計画には50億ルーブル(約130億円)の予算がかけられている。(c)AFP/Dmitry Zaks

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