【10月27日 AFP】海王星の軌道の外側にあるカイパーベルトで2005年に発見された謎多き小さな天体「エリス(Eris)」は、冥王星の「双子の兄弟」だとする論文が、26日の英科学誌ネイチャー(Nature)に発表された。

 エリスは当初、太陽系で最も小さく最も外側にある惑星とされてきた冥王星と同程度の大きさと想定された。そのためエリスの存在は、氷の天体が密集したカイパーベルトに未発見の惑星が数百個ほど存在する可能性を示唆していた。

 ただし、これらの天体や、冥王星本体については、惑星と呼べる大きさなのかという疑問があり、国際天文学連合(International Astronomical UnionIAU)は06年の総会で、冥王星をエリスなどとともに「準惑星」に降格した。この降格は現在でも物議を醸しており、ギリシャ神話の対立と不和の女神にちなんだエリスの名称は、いかにも似つかわしい。

■「更新」されるエリス表面の氷

 仏パリ第6大学(Pierre et Marie Curie University)とパリ天文台(Observatory of Paris)の研究チームは10年11月、チリのアタカマ砂漠(Atacama Desert)にある2基の巨大天体望遠鏡を使って、エリスが別の天体の手前を横切る星食を観測。光の曲がり方から、エリスの大きさと表面の様子について知る手掛かりを得た。

 エリスと地球の距離は地球・太陽間の距離(天文単位)の約100倍で、太陽系で観測に成功した最も遠い天体にあたる。直径2326±12キロメートルの球形をしていて、大きさは推定直径2300~2400キロの冥王星と奇妙にもうり二つだ。

 表面が極度に明るいことから、氷で覆われており、この氷が何らかの形で定期的に新しくなっていると予想される。恒久的に氷が張り付いたままなら、長年の宇宙線や微細ないん石の影響で暗くなると考えられるからだ。 

 研究チームは、エリスの大気にはメタンガスが豊富に含まれ、これが地表で凍ったりガスに戻ったりを繰り返しているとの仮説を立てた。つまり、エリスが楕円軌道の太陽に最も近い地点(30天文単位)に達すると、氷は温められてガス状になり、薄い大気を一時的に形成する。そして太陽から遠ざかるにつれ、大気は凍って表面に張り付くというのだ。

 論文は「その場合、エリスは現在休眠中の冥王星の双子の片割れと考えられる。表面は大気の崩壊でできた氷に覆われ、光り輝いている」と述べている。

 なお、エリスには、女神エリスの娘で古代ギリシャ語で無法状態を意味するディスノミア(Dysnomia)の名を冠した衛星がある。母と娘の公転周期は557年。冥王星とその衛星たちの公転周期は248年だ。(c)AFP