【10月7日 AFP】1968年に発見された高速回転する超新星残骸、かにパルサー(Crab Pulsar)は、現行の科学モデルで説明できる以上のエネルギーレベルでガンマ線をパルス状に放出しているとする論文が、米科学誌サイエンス(Science)10月7日号に発表された。

 かにパルサーは1054年、大質量星の核が崩壊して超新星爆発を起こした際に形成された。超新星残骸は光輝くかに星雲(Crab Nebula)となり、かにパルサーはその中心にある。

 かにパルサーの中心にある比較的若い中性子星は1秒間に約30回転している。強力な磁界も同じ速度で回転し、電磁波ビームを放出する。地球からは、電磁波の高速なパルスのように見える。

 26の研究機関の天文物理学者約100人から成る国際研究チームは、米アリゾナ(Arizona)州にあるホイップル天文台(Fred Lawrence Whipple Observatory)のベリタス(VERITAS)望遠鏡アレイで観測を行い、かにパルサーの中性子星が1000億電子ボルト(100 GeV)を超えるエネルギーを持っていることを見出した。

 科学者らは長年、パルサー放射について次のように考えてきた。高速回転する星の磁界が荷電粒子を光速近くまで加速させ、この時に生まれる電磁力によって放射される広域スペクトルの電磁波が、パルサー放射をもたらしているのだと。

 ただし、これがどのような過程で起こるかは謎のままだ。研究に参加した科学者らは、今回の発見はその過程を完全に理解することがいかに難しいかを示していると言う。

 カリフォルニア大学サンタクルーズ校(University of California at Santa Cruz)のデビッド・ウィリアムズ(David Williams)兼任教授(物理学)は、「かにパルサーを長年観測し、理解できていたと思っていた。モデルは発光スペクトルの指数関数的減衰を約10GeV以上と予測していたが、パルスガンマ線の放出量が100GeVとは本当に驚いた」と話した。(c)AFP