【10月5日 AFP】2011年のノーベル物理学賞の受賞が決まったオーストラリアのブライアン・シュミット(Brian Schmidt)氏(44)は、4日夜にスウェーデンの選考委員会から電話を受けた際、教え子の大学生たちによる、よくできたいたずらだと思ったことを明かした。

 受賞の知らせから一夜明けた5日、シュミット氏は、「初めは『うちの学生たちもやるな。アクセントなんて、まるでそれっぽいじゃないか』と思った」と語った。「まず女性が、わたしがブライアン・シュミットであることを確かめ、非常に重要な電話だと言った。それから電話をかわった選考委員が授賞の決定を読み上げ、祝福の言葉をもらった。最初の子どもが生まれた時のような気分だった。ひざから力が抜けるような感じがして、適当な言葉が見つからないが、ほとんど言葉が出なかった」

 1998年に暗黒エネルギーによって宇宙が「加速膨張」していることを発見したことが授賞理由。共同研究者である米国のアダム・リース(Adam Riess)氏、別のチームで同じ研究をしていた米国のソール・パールマッター(Saul Perlmutter)氏との共同受賞になる。

 豪ABCラジオに対しシュミット氏は、それまでの科学の定説を覆す発見だったが、画期的すぎて、自らの発見を疑ったと語った。「それが正しいなんてありえないと思った。我々は少々、怖さも感じていた」

 自ら述べるようにそれは「寂莫(せきばく)たる」発見でもあった。地球が属する天の川銀河の周りの銀河が想像を絶するスピードで遠ざかっており、最後に人類は冷たく荒涼とした宇宙空間に取り残されるというシナリオだったからだ。5日の発表記者会見でシュミット氏は「今は宇宙を眺めれば、何十億もの銀河が見えるが、いつかは何もない宇宙しか見えなくなるということだ。今見えている銀河はすべて、われわれに光が届かないほど遠くへ離れてしまう。一方、わたしたちの銀河の星たちも徐々に衰えて死に、われわれは無数の星くずと暗黒宇宙の中に取り残される」

 それが起きるのは、何千億年も先のことだが「天文学的な尺度で言えば、決して遠すぎる先の話ではない」とシュミット氏は述べた。

 シュミット氏は1994年、27歳でオーストラリアに移ったが、その時にすでに米ハーバード大学(Harvard University)で博士号を取得していた。そのような若い年齢で世界水準の研究を行える場所は、世界でも他にほとんどなかったと語った。(c)AFP/Amy Coopes