【6月13日 AFP】人類の進化のスピードはこれまで考えられていたよりはるかに遅く、定説の3分の1程度の可能性があるとする研究が12日、発表された。

 ヒトの遺伝子情報は60億個のヌクレオチド(DNAの構成要素)で構成され、母親と父親から半分ずつ受け継いでいる。定説では、両親がヌクレオチドにもたらす改変はそれぞれ100~200個程度とされていた。

 しかし、カナダ・モントリオール大学(University of Montreal)の研究チームが、両親と子ども1人から成る2家族で遺伝子変化を調べたところ、母親と父親がもたらした改変はわずか30個程度ずつだった。これは、進化の速度が原則として定説の3分の1程度だということを示していると、研究を率いたフィリップ・アワダラ(Philip Awadalla)教授は指摘する。
 
 もっと広いサンプルで確認されれば、進化の年代記が書き換えられることになる。霊長類が現生人類ホモサピエンスに進化するまでの世代の数え方も、変更を迫られることになるだろう。

■遺伝病と誤診されているケースも

 今回の研究は、DNAの改変を父母のどちらから受け継ぎやすいのかという点についても、従来の説に疑問を投げかけている。

 これまでは、父親からの方が受け継ぎやすいという考え方が主流だった。DNA改変(変異)は細胞分裂とDNA複製の最中に起こるため、卵子より、数百万個ほどが作られる精子の中で起こりやすいとみられていたためだ。

 だが、研究チームが調査した2家族のうち、片方は変異の92%が父親に由来していたが、もう片方では父親由来は36%にとどまっていた。アワダラ教授は、「変異の確率は個々人で著しく異なっている。あるいは、一部の人間は変異の可能性を下げるメカニズムを持っている」と言う。

 変異の多様性は、片親または両親から受け継いだ欠陥遺伝子に起因する遺伝病リスクの予測に関して再考を迫る発見だ。自然(突然)変異の確率が基準を上回る人が、遺伝病と誤診されているケースも存在すると考えられることになる。(c)AFP