【2月21日 AFP】使用者の思考で直感的に操作できる人工義手が17日、米国科学振興協会(American Association for the Advancement of ScienceAAAS)の会合で披露された。

 この義手は、米医師のトッド・クイケン(Todd Kuiken)氏が2002年に開発したもので、戦闘で腕を失った退役軍人などを中心に現在世界中で50人以上に提供されている。

 この義手は、脳からの信号を負傷で損傷した神経から損傷を受けなかった筋肉に送る「標的化筋肉再神経分布(Targeted Muscle ReinervationTMR)」という技術を使っている。「(損傷後も)まだ残っている神経を使う」技術で「筋肉が生体増幅器の役割を果たす」と、クイケン氏は説明する。

 米ワシントンD.C.(Washington D.C.)で開催されたAAASの年次会合でこの最新技術を実演した米退役軍人のグレン・リーマン(Glen Lehman)さんは、「直感的に動かせて、使い心地は非常にいいです。これまでに使ったどの人工義肢よりずっといい」と語った。リーマンさんは2008年にイラクのバグダッド(Baghdad)で手投げ弾による攻撃を受け、前腕とひじを失った。

■直感的な操作が可能

「わたしは他の義肢も持っていますが、そちらは筋肉の信号で操作します。筋肉を収縮させるのですが、直感的ではなく、使いこなすのに訓練が必要でした。でもこの義手はわたしに合わせてくれる。まるで自分の腕のようです」(リーマンさん)

 リーマンさんは報道陣の前で実際に指を動かし、腕を上げ、ひじを曲げてくれた。いずれの動作も、リーマンさんがそうしようと考えるだけで義手が動く。

 クイケン氏は現在、研究室で、義手に感覚を伝える技術などの実現に取り組んでいる。義手には、どのくらいの強さで握りしめているかを感知できないという欠点があるが、センサーを追加することで克服する研究が続いているという。

「たとえば、義手に埋め込んだセンサーの情報をもとに、同じくらいの強さで(上腕二頭筋の)この辺りをつまむ装置を作って、義手を使っている人が自分で握りしめている強さを感じ取れるようにする、というようなことを考えています」と、クイケン氏は説明する。

 クイケン氏は、いくつかの技術的な課題に直面して進展が遅れているものの、「前進させることにわくわくしている」と語った。(c)AFP/Kerry Sheridan

【動画】実演するグレン・リーマンさんの映像(YouTube/AFPBB News公式チャンネル)