【2月16日 AFP】Tボーン・ステーキは、木に実るわけではなく、1つの細胞から1晩で成長するわけでもない。だが、生物学者のウラジーミル・ミロノフ(Vladimir Mironov)氏(56)は、人工ステーキの実現はさほど遠くないと自信を見せる。

 食肉の「栽培」、つまり人工食肉の生産は、世界の食糧危機を解消し飢餓を撲滅する上で重要なステップとなるだろう。牛を乗せていくわけには行かない火星への有人飛行でも貴重な食料となるかもしれない。

 ミロノフ氏とニコラス・ジェノベーゼ(Nicholas Genovese)氏(32)の2人は、現在、米サウスカロライナ医科大(Medical University of South Carolina)の最先端の設備を誇る研究所で、日夜、人工食肉の実用化に向けた諸課題に取り組んでいる。

■肝臓が食肉として有望

 ミロノフ氏の人工食肉作製の夢は約10年前、米航空宇宙局(NASA)から心臓血管組織の作製に関して助成金を交付されたときから実現に向けて動き出した。

 この助成金はNASAの事情でストップした。ミロノフ氏はその際、NASAから未来のタンパク源の研究対象を遺伝子組み換え植物に移したためだと説明されたという。現在は動物愛護団体PETA(動物の倫理的扱いを求める人々の会)から3年の期限付きで研究資金の提供を受けている。

 ヒト組織工学が専門のミロノフ氏は、七面鳥から筋芽細胞(これが筋細胞になる)を取り出してウシ血清に浸し、筋組織を作製した。食肉としての作製が最も容易な器官は肝臓だという。 

 ミロノフ氏は、人工食肉は機能的な自然食品であり、人体に害はないと強調した。
 
 ミロノフ氏とジェノベーゼ氏は、8月にスウェーデンのイエーテボリ(Goteborg)で開催される欧州科学財団(European Science Foundation)主催の人工食肉に関するワークショップに招待されている。その際に、自分たちの研究所で作製した食肉の試食会を開く予定だという。(c)AFP/Rob Carli