【11月22日 AFP】米政府は通常の2倍の速さで成長する遺伝子組み換えサケの食品としての販売を近日中に承認する意向だが、早急な承認はこのような食品が社会に与える危険性を見落とす可能性があると警告する論文が、18日の米科学誌サイエンス(Science)に発表された。

 このサケは、マサチューセッツ(Massachusetts)州のバイオテクノロジー企業、アクアバウンティ・テクノロジーズ(AquaBounty Technologies)が開発したもので、タイセイヨウサケ(アトランティック・サーモン)に成長の早いキングサーモンの成長ホルモン遺伝子を組み込んでいる。

 米食品医薬品局(FDA)が承認すれば、遺伝子組み換え動物が食品として初めて市場に出まわることになり、今後さまざまな遺伝子組み換え動物の流通へと扉を開くことになろう。

 しかし論文を掲載した米国とノルウェーの科学者の共同チームは、人びとの食習慣や購買習慣、健康や環境の変化まで、遺伝子組み換え動物の流通によってもたらされる影響はまだ研究されて尽くしていないと指摘する。

 経済学者のマーチン・スミス(Martin Smith)氏は、「前例ができれば、遺伝子組み換え動物はもっと登場するだろう。食品が安くなって人びとが食費以外のものに支出できるようになるのは良いことだが、いくら安くても健康に悪い食品を作り、人々がそちらを選ぶようになれば、国民全体の健康が悪化する」と懸念する。

 一方、FDAの広報担当はAFPの取材に対し、承認決定までに特に期限は設けていないと答えている。

 この遺伝子組み換えサケに関しては9月にも、専門家による独立組織が政府に対し、人体や環境に対する危険性について今までの研究だけでは不十分だと訴えている。専門家による委員会の勧告に拘束力はないが、FDAでは通常、こうした勧告に従うことが多い。(c)AFP/Kerry Sheridan

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