【11月16日 AFP】宝石強盗、マジシャン、試験でのカンニング、誰かをただ驚かせたい人も、16日に英国の物理学者が発表したこのアイデアに興味を持つに違いない。英インペリアル・カレッジ・ロンドン(Imperial College London)とサルフォード大学(Salford University)の研究チームによると、光ファイバーの性質を活用して「光子(フォトン)」の流れを遅くさせ、ある出来事を監視カメラで見えなくすることができるという。

 英物理学会(Institute of Physics)の学会誌「Journal of Optics」に多数の数式や図とともに掲載されたこの論文は、「短時間であれば、金庫破りが現場に侵入して金庫を開け、中身を盗み出して金庫を閉めて現場を立ち去る間、監視カメラの映像を伝える光の速度を遅くしてドアが一度も開かなかったように見せることが可能だ」と説明している。

■光ファイバー通る光の速度を調整して「編集」

 通信ケーブルとして広く用いられている光ファイバーは光強度の違いがファイバー内の屈折率に影響を及ぼす。そして屈折率が変化すると、ファイバーを通る光の速度が変化する。これを利用するのだという。

「金庫破り」の例でいえば、まず、金庫破りが部屋に入る前にファイバーを通る光の速度を遅くする。そして金庫破りが立ち去った後で光の速度を速くすると、金庫破りが仕事をしている場面が監視カメラの画面に映されることなく、事件前と事件後の映像がなめらかにつながって見えるのだという。

「ある出来事を映す光が観測者に届く伝送路を操作することで、時間の経過を隠すことが可能になる」と、研究チームを率いたインペリアルカレッジのマーティン・マッコール(Martin McCall)教授は語る。「ある出来事を隠すだけでない。あなたのことを見ていたと思ったら、突然あなたが姿を消して、別の場所に突然現れるといったこともできる」

 この理論に基づいた実験などはまだ行われていないが、論文の執筆者らは、実験で証明されるのは遠い将来のことでないと確信している。(c)AFP