【8月29日 AFP】英国で27日、世界で初めて小麦のゲノム(全遺伝情報)が公表された。人口増加や気候変動、害虫などの課題を抱える食糧安全保障に恩恵をもたらすとみられている。

Chinese Spring line 42」という品種の全遺伝情報のうち95%が解読された。解読に参加した英ブリストル大学(University of Bristol)のキース・エドワーズ(Keith Edwards)氏によると、小麦のゲノムは人間のものより5倍も大きく、科学者にとって大きな挑戦だったという。

 小麦の収量向上や病気、水ストレス、害虫に対する抵抗力を高める研究を支援するため、ドラフト配列はパブリックドメイン化され、インターネット上に公開された。

 研究を支援した英国の研究助成機関、バイオテクノロジー・生物科学研究会議(Biotechnology and Biological Sciences Research CouncilBBSRC)のダグ・ケル(Doug Kell)最高経営責任者は、「最近の小麦価格の急騰は、われわれの食糧システムが突発的な出来事に対していかにぜい弱であるかを示し、将来的な食糧不足の懸念が浮上した」と語る。

「気候変動対策が緊急の課題になっている今、食糧安全保障を支える最良の方法は、現代的な研究戦略で収量を持続的に向上させていく方法を知ることだ」とケル氏は語った。

 ドラフト配列は5回もチェックされているので精度は高いはずだが、小麦ゲノムの完全な解読にはさらなる研究が必要だという。

 小麦価格は6日、ロシアの森林火災と、カナダとパキスタンの穀倉地帯を襲った洪水の影響で収穫量が減るとの懸念から急騰し、24か月ぶりの高値をつけた。(c)AFP