【6月14日 AFP】約35億年前、火星の表面の3分の1以上が巨大な海に覆われており、そこで生命が誕生した可能性があるとする研究が、13日の英科学誌ネイチャー・ジオサイエンス(Nature Geoscience)に掲載された。

 米コロラド大学ボルダー校(University of Colorodo in Boulder)のガエターノ・ディアシル(Gaetano Di Achille)氏とブライアン・ハイネック(Brian Hynek)氏の研究チームは、米航空宇宙局(NASA)のレーザー高度測定器MOLAMars Orbiter Laser Altimeter)が1990年代後半に収集した大量の画像や、より最近の欧米の衛星観測システムによる画像を分析した。データは最新のものではないが、火星の地形に関する全データを1つのコンピューターモデルで解析したのは今回が初めて。

 研究によると、三角州の堆積物が火星の表面52か所で発見された。そのうち半数以上がほぼ同じ高度でみつかったことから、研究チームは、これらの同高度の三角州に面して、かつて巨大な海が存在していた可能性があると指摘した。推計によると、海は火星表面の36%を覆い、体積は1億2400万立方キロメートルだったという。また、52か所の三角州はすべて、海や湖、地下水面につながっていた可能性があるという。

 地球で単細胞生物が誕生した約35億年前には、地球のような降雨、水流、雲の形成、氷の形成、地下水といった水循環が火星にあったと研究チームは結論づけている。

 また、ハイネック氏は、関連する研究成果として、火星にこれまでの推測の4倍に上る4万の川谷があったとの研究結果を、地球物理学研究の科学誌「Journal of Geophysical Research」に発表した。

 ディアシル氏は、「地球では過去の生物の痕跡が三角州や湖に集まったり、残されていたりすることが多い」と指摘し、「仮にかつて火星に生命が誕生していたとしたら、三角州が火星のかつての生命の姿を明らかにするカギとなるだろう」と述べた。

 しかし、仮に火星にかつて水があったとしてもその水がどこへ消えたのか、など謎はまだまだ多い。NASAが2013年に打ち上げを計画する火星探査機MAVEN(メイブン、 Mars Atmosphere and Volatile Evolution)などに、新たな手がかりの発見が期待される。(c)AFP