【6月12日 AFP】北極海の氷冠に関して、米航空宇宙局(NASA)は8日、米沿岸警備隊(US Coast Guard)の砕氷船「ヒーリー(Healy)」号を使用する初の本格的な海洋学的調査遠征を、週明けから開始すると発表した。

 NASAの北極海調査遠征は「北極圏太平洋における生態系と化学現象に対する気候の影響」(Impacts of Climate on Ecosystems and Chemistry of the Arctic Pacific Environment" mission)、通称「ICESCAPE」と題され、15日から開始される。

 40人の科学者がヒーリーに乗り込み、5週間かけて北極海の海洋や海氷のサンプルを集め、北極海における変化が海洋現象や生態系に及ぼしている影響を把握することを目指す。

 北極海に関するNASAの前年の研究では、2004年冬~08年冬の4年間に、海氷が激減したことが明らかになっている。中でも厚い層となっていた古い海氷が、アラスカ州の陸部と同程度の広い面積で失われていた。

 今回の「ICESCAPE」の研究責任者の1人、ドン・ペロビッチ(Don Perovich)氏は8日、北極海の海氷は現在「層の厚さが1.5~3メートルしかなく、気候変動に非常にぜい弱になってしまっている」と説明した。

「ICESCAPE」の任務のひとつは、北極海の変化によって、海洋の二酸化炭素吸収力にどんな変化があるのかを見極めることだ。遠征では、地球温暖化の影響をまともに受けていると科学者たちが指摘する北極海アラスカ沖のチュクチ海(Chukchi Sea)、ボーフォート海(Beaufort Sea)を重点的に調査する。(c)AFP