【6月3日 AFP】モスクワ(Moscow)にあるロシア科学アカデミー生物医学研究所(Institute for Biomedical Problems Russian Academy of ScienceIBMP)で3日から、男性6人がおよそ1年半にわたって宇宙船を模したモジュールの中に閉じ込められる。

 この実験は、火星への有人飛行計画における心理的影響のシミュレーション。3日午後2時(日本時間同午後7時)に閉じられたハッチが再び開くのは、520日後の実験終了時か、何らかの理由で6人のうちの誰かを実験から除外する必要が生じた時のみとなる。

 実験に参加する6人――ロシア人3人、イタリア人、フランス人、中国人各1人――はボランティアだ。

■宇宙食のみ、メールは40日遅れ 「火星探査」も実施

 実験は、実際の火星探査で見込まれる往路250日、復路240日、探査期間30日のスケジュールに沿って進められる。1日の時間割は、睡眠が8時間、作業が8時間、余暇が8時間だ。6人のうち3人は、1か月間ほど「着陸船」に見立てた特別なモジュールの中で過ごす。2人が「火星探査」を行うことも予定されている。

 実際の火星探査を想定し、食事は国際宇宙ステーション(ISS)に滞在する宇宙飛行士のものと全く同じ宇宙食が、実験開始時に一括して支給される。実験期間中は限られた量を自分たちでやりくりしていかなければならない。

 外部との連絡手段はEメールのみで、しかも実際の状況を想定して最大40分間の「遅延」を生じさせるという徹底ぶりだ。

 なお、ボランティアの中に女性はいないため、男女混合チームの場合に想定される「性的緊張」については調査することができない。

 中国人ボランティアのワン・ユエ(Wang Yue)さん(27)は、「実験は参加者全員にとって苦しいものになるでしょう。家族にも友達にも会うことができないし。でも、自分たちの人生の中で最も輝かしい時間になるのではないかと思っています」と語っている。(c)AFP

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【参考】IBMPのプロジェクト「MARS-500」のウェブサイト(英語)