【6月3日 AFP】人類の最古の祖先とされる猿人「アルディ(Ardi)」は森林に住んでいたとの説に反論する米国の科学者らによる論文が、科学誌「サイエンス(Science)」の5月28日号に掲載された。

 アルディはエチオピアで化石が発見され、後に440万年前のアルディピテクス属ラミダス猿人の女性の化石と判断された。2009年にはサイエンス誌が選ぶ同年の「最も重要な科学的業績」の1位に選ばれている。

 アルディは森で生活していたと考えられたため、人類の起源はサバンナにあるとしたそれまでの定説を覆す発見となった。サバンナは雨期と乾期があり、雨期にだけ背の高い草が生え、低木が点在する熱帯・亜熱帯の草原地帯。

 人類のサバンナ起源説では、人類の祖先はサバンナの拡大にともなって樹上生活から立ち上がって二本足で歩行する生活に移行したとされている。

 化石を発見した研究者らはサイエンス誌に約10本の論文を発表し、親指が他の指と対置できる大きな足指や、木の枝をつかめるしなやかな手などのアルディの特徴を報告していた。

 またアルディの化石が発掘された地域からは、木や植物、種子、サル、オウム、カタツムリなどの化石も発見されている。こうしたことから、アルディが生活していた当時、この場所は現在よりも冷涼で雨の多い森林地帯だったと考えられた。

 だが、米ユタ大学(University of Utah)のThure Cerling氏を筆頭とする地質学者や人類学者ら8人の研究チームは、この説に異論を唱えた。

 Cerling氏らが、アルディの化石や、ともに発掘された化石化した穀物や植物を再度分析したところ、化石が見つかった地域は、温帯気候の半乾燥地帯だったことが分かったという。この結果から研究チームは、人類のサバンナ起源説を否定するのは誤りだと論じた。(c)AFP