【4月5日 AFP】火星の地下に眠る膨大な氷を発見した米航空宇宙局(NASA)の技術を地球上の水資源の探査に活用すれば、中東地域での水争いを防ぐことも可能だ――。NASAの科学者が1日、講演で語った。

 NASAは2007年、火星の表面を水で覆うことが可能なほどの膨大な量の氷が、火星の地下に眠っているのを発見した。その際に使用された装置が、火星探査機マーズ・エクスプレス(Mars Express)に搭載された地下探査レーダ高度計「MARSISMars Advanced Radar for Subsurface Ionospheric Sounding)」。全長40メートルのアンテナで、火星の地下3.7キロメートルまで探査できる。

 NASAのジェット推進研究所(Jet Propulsion LaboratoryJPL)の惑星科学者、Essam Heggy氏は、エジプト・アレクサンドリア(Alexandria)で開かれた国連開発計画(United Nations Development ProgrammeUNDP)が後援する水会議で、MARSISを中東やアフリカ北部などの広大な砂漠地帯で使用すべきだと述べた。

 同氏によると、MARSISならば中東やアフリカ北部の大半を覆う砂漠で、地下約1キロに眠る水を探査することが可能だという。NASAが実施した測定では、乾燥の特に厳しいスーダンのダルフール(Darfur)地方の地下に、約6000年前の谷と湖が眠っていることを突き止めた。「かつて地表に存在していた水が、現在は地下に潜っているのだ」

 Heggy氏は、「水には代用品が存在しない。にもかかわらず水探査は行われていない」と述べ、石油探査は盛んだが水探査には熱心ではない中東地域で将来、水不足から争いが起きる危険性があると指摘した。(c)AFP