【4月4日 AFP】約10万年続いた氷河期の後、温暖化傾向にあった地球が再び急激に寒冷化した新ドリアス期(Younger Dryas)は、彗星の衝突によって引き起こされたという論文が、英国王立天文学会(Royal Astronomical Society)発行の専門誌「Monthly Notices」で発表された。

 英カーディフ大学(Cardiff University)のビル・ネイピア(Bill Napier)教授(宇宙生物学)が複雑な方程式を解き、新たな知見も検討して作り上げた学説によると、約3万年前から内部太陽系をさまよっていた50~100キロの彗星の破片が地球に衝突し、その際に起きた火災が大気中に灰とほこりを巻き上げ、太陽からの熱を遮断したために新ドリアス期が始まったのだという。約1万2900年前から約1300年続いた新ドリアス期において、気温は最大で8℃も下がった。

 考古学的にもネイピア氏の説を支持する証拠が見つかっている。北米の15か所で新ドリアス期の地層から薄い炭素の堆積層が見つかっている。また溶解した植物樹脂の中から、いん石が作ったクレーターに特徴的な微小なダイヤモンドも見つかった。

 さらに、化石の研究から、ある種のマンモスなど少なくとも33種のほ乳類が、この時期に忽然と姿を決したことも明らかになっている。

■大量の小さないん石が落下?

 しかし、天文学者の間には異論もある。太陽系ができた直後に多数存在した大型のいん石は新ドリアス期のころには少なくなっており、地球に大きないん石が衝突する可能性は非常に低かったと考えられることや、いん石の衝突による熱の影響は地平線より先には及ばないはずなので、大陸全体で生物が絶滅した理由とは考えにくいというのがその理由だ。

 これに対しネイピア氏のモデルでは、1つの大きないん石ではなく、大量の小さな破片が地球に落下したと想定している。

 その時間帯に数千個のいん石が北米大陸に降り注ぎ、その1つ1つがメガトン級の核兵器に匹敵するエネルギーを放出したと考えると、火災が広範な範囲に及んだことの説明が付くという。

 ネイピア氏は、地球は現在も1つの彗星が分裂したと考えられている多数の小惑星からなる「おうし群複合体(Taurid Complex)」を通過していることを心配している。その多くは大気圏に突入すれば燃え尽きるほどの小さなものだが、ある程度の大きさのものも、少なくとも19個が知られているという。

 6200万年前に地球に衝突し恐竜を絶滅させたいん石ほど大きくはないかもしれないが、「1キロメートルほどのいん石でも、地球に落下すれば人類史上前例がない規模の被害をもたらす恐れがある」(ネイピア氏)という。(c)AFP/Richard Ingham