【3月18日 AFP】2003年に「ホビット(Hobbit)」の通称で呼ばれる新種人類の化石が発見されたインドネシアのフローレス(Flores)島には、従来説から少なくとも12万年さかのぼる約100万年前から人類が生息していたことが、新たな研究で明らかになった。17日、英科学誌ネイチャー(Nature)に発表された。

 フローレス島では7年前、身長1メートル、体重30キロ、チンパンジー程度の大きさの脳をもつ小型類人猿の化石が発見され話題になったが、この発見は以降、「ホビット」を現生人類と同じホモ・サピエンス(Homo sapiens)とみなすかどうかをめぐる論争を巻き起こした。科学者たちはホビットについて、ホモ・サピエンスと別の種だとみなすグループと、疾患のために身長の低いホモ・サピエンスだとみなすグループで真っ二つに分かれた。

 ホビットとはJ・R・R・トールキン(J.R.R. Tolkien)の冒険小説に登場する小人族にちなんだ通称だが、学名は「ホモ・フロレシエンシス(Homo floresiensis)」(フローレスの人間の意)という。

 新たな研究は火山性堆積物層の年代に依拠した。この堆積物層は、フローレス島のソア(Soa)盆地の中のWolo Segeと呼ばれる場所のもので、中からは石器時代の道具が発見された。

 研究論文の筆頭執筆者である豪ウーロンゴン大学(University of Woollongong)のアダム・ブルム(Adam Brumm)氏は、AFPの電子メール取材に対し「類人猿の化石は一緒に発見されなかったので、どの類人がこの石器を作ったのかは残念ながら分からない。しかしわれわれは、ソア盆地の道具を製作したのはホモ・フロレシエンシスの祖先だという作業仮説を立てた。この仮説の裏付けは、彼らのの石器に見られる類似性だ」と述べた。

 Wolo Segeからわずか500メートルしか離れていないMata Mengeという場所で発見された証拠を元に、ヒトとチンパンジーをくくるホミニン(ヒト族)が現在のフローレス島に最初に現れたのは、これまで88万年前ごろと考えられていた。

 この時期は、謎に満ちたフローレスの2種類の生物、ステゴドン・ソンダーリ(Stegodon sondaari)と呼ばれる小型のゾウと、リクガメ属に属する巨大なカメの激減した時期と重なる。このため専門家の中には、生物種の絶滅に関連づけて語られることの多い人類が繁殖し、狩猟や生息環境の破壊したことが原因だという指摘もある。

 しかし新たな研究結果は、この2種類の生物の絶滅に限っては人類の責任ではなく、火山爆発によって一帯が火山灰に覆われてしまったためか、気候変動などほかの自然原因の結果だろうと推論している。(c)AFP