【2月21日 AFP】新生児のヘソの緒に含まれる「さい帯血」から取り出した幹細胞を保存して難病の治療に役立てるという、いわゆる「幹細胞バンク」。再生医療の1つとして注目を集めているが、幹細胞研究の第一人者が「幹細胞バンクは詐欺だ」と警告して話題になっている。

 現在、多くの国の医療施設では、両親が希望すれば新生児のへその緒を保存できるようになっている。子どもが将来重い病気にかかった場合に、さい帯血から幹細胞を取り出して治療に利用することが目的だ。たとえばタイには、「子どもの健康保険の一種」として3600ドル(約33万円)程度を支払って幹細胞バンクを利用する家庭もある。

 しかし、米カリフォルニア(California)州のスタンフォード大学(Stanford University)幹細胞生物学・再生医療研究所(Institute of Stem Cell Biology and Regenerative Medicine)のアービン・ワイスマン(Irving Weissman)博士は20日、全米科学振興協会(American Association for the Advancement of ScienceAAAS)の年次大会で、「幹細胞バンクは親たちの善意につけ込んでいるだけ」として警戒するよう呼びかけた。

 効果が実証されていない幹細胞を使った治療を手掛ける施設が幹細胞に関する規制が緩い国で多数開設されているとワイスマン博士は指摘する。なおAFPが調べたところ、欧米諸国にも複数の幹細胞バンクのウェブサイトがあることが分かった。

「この種の診療施設では確かに幹細胞を使った治療を行うが、その後は患者任せだ。重い病気で家族と一緒にいるべき患者を家族から引き離して、効果が見込めない治療をする。費用は1回あたり5万~15万ドル(約450~1400万円)程度だろう」と博士は話す。「こんなことは間違っている」

  国際幹細胞学会(International Society for Stem Cell ResearchISSCR)は、幹細胞を使った有効性が実証されていない治療法についての調査報告書を4月に発表する予定。(c)AFP