【11月4日 AFP】フランスの文化人類学者で思想家のクロード・レヴィストロース(Claude Levi-Strauss)氏が死去した。100歳だった。出版社や同僚らが3日明らかにした。

 レヴィストロース氏は前月30日に亡くなり、内輪だけの葬儀が行われたあと、自宅のあるリニュロル(Lignerolles)村に埋葬されたという。関係者によると、レヴィストロース氏は2年前に腰の骨を折って以来、体が非常に衰弱していた。

 レヴィストロース氏は、アマゾンでのフィールドワークを基に人類学における「構造主義」を提唱した。これは、人間の文化と人間関係の外郭を形成すると考えられる無意識かつ原始的な思考パターンを明らかにしようとするものだ。

 そして導き出されたのが、いわゆる「未開」社会の思考体系と神話は、現代西洋代社会のそれと基本的に違いはないとする結論だった。これは世の中に大きな衝撃を与えた。
 
■ユダヤ人であるために亡命

 1908年、ベルギー・ブリュッセル(Brussels)生まれ。両親は、フランス出身のユダヤ人だった。

 哲学を学んだのち、1935年にブラジルへ渡り、サンパウロ大学(University of Sao Paolo)の教授に就任。アマゾンの先住民の生活と熱帯雨林を研究し、「人間関係と神話の根本的な構造はさまざまな文化に共有されている」というのちの「構造主義」理論を裏付ける資料を収集する。このときの経験をつづった『悲しき熱帯(Tristes Tropiques)』(1955)が、レヴィストロースの名前を初めて世に知らしめることとなった。

 1939年にフランスへ帰国したが、徴兵される。やがてナチスがフランスに侵攻し、ナチスによるユダヤ人迫害を恐れて米国へ亡命。帰国のチャンスをうかがいながら、大学などで教鞭をとった。

■人口過密の地球を危惧(きぐ)

 レヴィストロース氏は、フランスの知識人の間で最も権威のあるアカデミー・フランセーズの最年長の会員だった。1959年に国立高等教育機関コレージュ・ド・フランス(College de France)の社会人類学教授に就任し、1982年に定年退職する。

 2005年、テレビ番組のインタビューで、「人口が過密になったこの地球は居心地が悪い。自分が愛していないこの世界で生涯を閉じるのは不安」と話していた。「多くの動植物、さまざまな生物が恐ろしいまでに消滅している。この過密状態のせいだ。人間という種は互いに害を及ぼし合う環境の中で生きているようなもの」

 3度結婚し、2人の息子がいる。(c)AFP/Carole Landry